はじめに
EA(自動売買)運用の安全性は「注文がブローカー サーバー に登録されるかどうか」で大きく変わります。
ブローカーのサーバー登録された予約注文やSL/TPは、VPSやEAが止まってもブローカーサーバー側で自律的に作動します。これはVPSやMT5が停止した場合も注文やポジションが保護されるため、リスク管理上大きなメリットとなります。
一方で、成り行きの発注・決済は“その瞬間の通信”に依存します。
図解①:注文タイプ×サーバー登録・レイテンシ感度
| 注文タイプ | 目的 | サーバーに登録? | レイテンシ感度 |
|---|---|---|---|
| 成行注文(建玉) | 現在価格ですぐに建てる | いいえ | 高い |
| 成行決済(クローズ) | 現在価格ですぐに決済する | いいえ | 高い |
| ストップ注文(買いストップ / 売りストップ) | ブレイクアウトで建玉 | はい | 低い |
| リミット注文(買いリミット / 売りリミット) | プルバックで建玉 | はい | 低い |
| ストップロス(SL) | 損失を自動で限定する | はい | 低い |
| テイクプロフィット(TP) | 利益を自動で確定する | はい | 低い |
| トレーリングストップ(MT標準) | 価格に合わせてストップを追随させる | 多くはクライアント側* | 中〜高 |
* MT4/MT5の標準挙動。ブローカーや環境によって異なる場合があります。実口座の前に必ず検証してください。
図解②:VPS/EA停止時に何が守ってくれるか
- VPS/EAがオフライン → 決済コマンドを送れない
- 急変時にポジションが放置される恐れ
- 復旧までの時間にリスクが依存
- トレーリング(クライアント側)も停止
シナリオB:サーバー上のSL/TP
- サーバーがSL/TPを監視(VPS/EAが止まっていても作動)
- トリガー到達で自動決済 → 損失は上限化
- 未約定の予約注文は有効期限を併用
- トレーリングは「保護」ではなく最適化として利用
推奨:ポジションを建てる際は必ずSL/TPを設定してください。新規エントリーは可能な限りサーバー登録型の予約注文(ストップ/リミット)を活用しましょう。
基本用語の整理(注文タイプ別)
成り行き注文(Market Order)
「今すぐ建てる」指示。サーバー登録はしない(発注時の通信で完結)。
成り行き決済(Market Close)
保有ポジションを「今すぐ閉じる」指示。サーバー登録はしない。オフライン時は出せない。
ストップオーダー(Buy Stop / Sell Stop)
指定価格到達で新規建ての予約。サーバー登録はする。到達監視はサーバー。
リミットオーダー(Buy Limit / Sell Limit)
引きつけて指定価格で新規建ての予約。サーバー登録はする。
ストップロス(SL)
損失限定のための自動決済予約。サーバー登録はする。ギャップ時は滑り得る。
テイクプロフィット(TP)
利確のための自動決済予約。サーバー登録はする。
トレーリングストップ(参考)
MT4/MT5標準はクライアント側ロジック。ターミナルがオンライン前提。保護は固定SL/TPを基本に。
サーバー登録の有無で変わるリスク
レイテンシ(遅延)リスク
- 成り行きは端末→サーバーのリアルタイム通信に依存し、遅延増大で不利約定が増えやすい。
- 予約注文やSL/TPはサーバー監視のため、トリガー時点の端末レイテンシ影響は小さい(ただし滑りは別問題)。
関連記事:レイテンシを下げるVPSロケーション選び|EquinixとNY4/LD4/TY3の基礎・ストップ型EAの影響
VPS・EA停止時のリスク
- 成り行き決済依存だと、停止中は“閉じる指示”が出せない。
- サーバー登録済みの予約注文・SL/TPは機能し続ける(最低限の安全装置)。
- 予約注文の取消はEA停止時にできない→有効期限を設定して放置リスクを軽減。
関連記事:VPS運用の基礎:止めない・重くしない
相場急変・ギャップ時のリスク
- どの方式でも“指定価格ぴったり”は保証されない。ギャップや薄商い時は滑りうる。
- SL/TPは「作動するか」と「どの価格で約定するか」が別。作動はするが約定価格は市場次第。
代表シナリオでの挙動
- EAが落ちた/VPS再起動:成り行き決済は不可。SL/TPと予約注文はサーバーが継続監視。
- レイテンシ増大:成り行き中心は不利約定が増えやすい。サーバートリガー中心では影響が限定的。
- ボラ急拡大:滑りは起こりうるが、SLなし運用より損失の上限を明確化できる。
実務のベストプラクティス
- 新規注文はTP/SLを同時に設定。
- 予約注文には有効期限を設定。
- トレーリングは最適化用途。保護は固定SL/TPで。
- 許容スリッページ・最小距離を保守的に設計。
- イベント・週末ルールを事前定義。幅や建玉、予約注文の棚卸しを。
- 1トレードの最大損失を常に定義。
- 監視・異常検知を用意。VPS稼働や未キャンセル残りを検知。関連記事:EAのVPS監視と自動通知設定
当サイトEAの方針(低リスク設計)
当サイトのEAはすべてストップオーダー+TP/SLありを基本に、サーバー監視の利点で「レイテンシ悪化」と「VPS/EA停止」のリスクを低減します。スキャルのような瞬発的な成り行き依存を避け、“止まっても最低限守られる”運用を重視します。
まとめ
- 成り行きは通信依存。予約注文・SL/TPはサーバー登録で自律作動。
- 滑りはゼロにできないが、SL/TPの有無で損失上限が大きく変わる。
- 本番前にブローカー環境で必ず挙動を検証。
FAQ
- Q. SL/TPはEAやVPSが止まっていても機能しますか?
- A. はい。通常はブローカーサーバーに登録され、サーバーが価格到達を監視・執行します(滑りが起こる可能性はあります)。
- Q. ストップオーダーとストップロスは同じものですか?
- A. いいえ。ストップオーダーは「新規で建てる予約」、ストップロスは「保有を決済する予約」です。
- Q. 予約注文なら滑りませんか?
- A. いいえ。ギャップや流動性低下時は指定価格から滑ることがあります。作動と約定価格は別です。
- Q. トレーリングストップはサーバーで動きますか?
- A. MT4/MT5の標準トレーリングは端末側ロジックです。オンライン前提のため、保護は固定SL/TPを基本にしてください。
- Q. EA停止中に予約注文をキャンセルしたい場合は?
- A. 有効期限(Expiration)を設定しておくと放置リスクを下げられます。復旧後に棚卸しも推奨です。
- Q. スキャルピングではどの方式が向いていますか?
- A. 成り行きはレイテンシの影響を強く受けます。ブレイク狙いはストップ、引きつけはリミットなど、サーバートリガー中心が安定しやすいです。